『村上海賊の娘』
和田竜の『村上海賊の娘』を紹介します。昨年末のしまなみ海道の自転車旅に合わせて読み始め、お正月に読み終わりましたが、とても痛快な歴史エンターテイメントでした。主人公は、戦国時代の末期に活躍した海賊、村上武吉の娘、景(きょう)。女ながらに海賊働きに明け暮れ、「悍婦にして醜女」と呼ばれていたという設定です。
景は、海賊働きの中で浄土真宗の宗徒らを助け、彼らの願いに応じて石山本願寺を目指して大坂に赴きます。そこで織田信長が石山本願寺を包囲攻撃した石山合戦に巻き込まれ、この長編小説のクラスマックスである第一次木津川口の戦い(1576年)へとつながっていきます。それにしても、景の敵役となった真鍋七五三兵衛(まなべしめのひょうえ)のターミネーターっぷりがすごく、どうやったら死ぬんかい!と思わずツッコみたくなりました。それはそれでエンターテインメントとしては、あり得ると思います。
それにしても、旅と文学の相性はぴったりです。たとえば、村上海賊の三人の当主、因島(いんのしま)村で上の吉充(よしみつ)、能島(のじま)村上の武吉(たけよし)、来島(くるしま)村上の吉継(よしつぐ)が大三島(おおみしま)にある大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)の大きな楠木(くすのき)の下で会談をする場面が小説にあるのですが、「おおっ、何日か前にオレもそこにいたよ!」という感じですごい臨場感でした。
皆さんも、しまなみ海道を訪れる際には、事前に読んでおくことをおすすめします。
文庫本で全4巻ですが、あっという間に読み終わりますので、ご心配なく。
因島水軍城。因島村上氏が残した武具や遺品、古文書など歴史資料を展示している資料館がありますが、ここに城郭があったという史料は残っていません。
大三島にある大山祇神社(おおやまづみじんじゃ)のクスノキです。小説では、ここで毛利元就にしたがって大坂に水軍を送るかについて、村上三家の武吉、吉充、吉元が会談を行ったとされています。
伯方島と大島の間にある能島。本当に小さな島です。ここにかつては、能島村上家の城郭があったそうです。
来島海峡にある来島。かつては、ここを拠点に海賊が勢力を保持しました。
Comments