国分寺崖線の旅 その2(2020.8.6)
更新日:2020年12月16日
今日は国分寺駅からスタート。すぐに小金井市に入り、国分寺崖線の下の道を進み、まずは貫井神社へ。国分寺崖線の下には、湧き水が出てくる。貫井神社にも湧き水があり、「東京の名湧水57選」に選ばれている。かつての武蔵野の雰囲気が残されている貴重な場所の一つである。
さて、この地域は、武蔵野の方言で「はけ」と呼ばれる。大岡昇平の恋愛小説『武蔵野夫人』の舞台となった地域である。その冒頭は、次のような文ではじまる。
土地の人はなぜそこが「はけ」と呼ばれるかを知らない。「はけ」の荻野長作といえば、この辺の農家に多い荻野姓の中でも、一段と古い家とされているが、人々は単にその長作の家のある高みが「はけ」なのだと思っている。中央国分寺駅と小金井駅の中間、線路から平坦な畠中の道を二丁南へ行くと、道は突然下りとなる。野川と呼ばれる一つの小川の流域がそこに開けているが、流れの細い割に斜面の高いのは、これがかつて古い地質時代に関東山地から流出して、北は入間川、荒川、東は東京湾、南は現在の多摩川で限られた広い武蔵野台地を沈殿させた古代多摩川が、次第に西南に移って行った後で、斜面はその途中作った最も古い段丘の一つだからである。
小金井市で「東京の名水57選」に選ばれている場所があと二つある。ひとつが、滄浪泉園
(そうろうせんえん)である。旧波多野邸別荘で、国分寺崖線下から豊かな地下水が湧き出るため、湧水を集めた広い池がある。樹木が生い茂り、武蔵野の面影をよくとどめている。
滄浪泉園から少し進むと、金蔵院(こんぞういん)という寺院がある、ここから、約2kmにわたって小金井市が整備している「はけの道」がつづく。散歩やサイクリングには、ぴったりの道だ。
金蔵院
ここから「はけの道」がはじまる
旧谷口家のオニイタヤ
オニイタヤは、カエデ科の一種、イタヤカエデの亜種で、葉が大きく、裏面全体に毛があるのが特徴である。葉がよく茂るために、板で屋根を葺いた板屋に例えてこの名(イタヤカエデ)がある。
旧谷口家のオニイタヤは、樹高14メートル、幹周囲は4.2メートルある。
国分寺崖線には山地から下降したこの種がまれに見られるが、ここに生育する個体もその例で、分布の希少性、その大きさからも貴重である。
(小金井市教育委員会)
さらに、もう少し行くと、小金井市立はけの森美術館がある。公式HPには、美術館について次のような説明がある。
中村研一記念小金井市立はけの森美術館は、財団法人中村研一記念美術館の寄贈を受け、平成18年4月に開館しました。当館が目指すのは、市民参加・参画型の美術館、教育プログラムを充実させ、市民の芸術文化活動の拠り所となることです。年間4回程度の展示替えを行い、基本コレクションとなる中村研一の作品を紹介する所蔵作品展のほか、美術館の企画による特別展を年間1~2回開催します。
この日の特別展は「木陰 中村研一、自然を描く」。ここにアトリエをおいていた中村研一の風景画やかわいがっていた猫の絵画が展示されていた(撮影禁止で写真なし)。リビングだけは撮影OK。朝倉彫塑館にも多くの猫の像があったので、芸術家たちは猫の造形になにか特別なものを感じるのだろうか、ふと思ってしまった。
はけの森美術館からさらに東に向かうと、ムジナ坂の先に武蔵野公園がみえる。さらに、その先には野川公園。どちらも野川沿いのほとんどひと続きの公園だが、小金井市と調布市の二市に管轄が分かれるためか、異なる公園名になっている。猛暑日のなか、子どもたちが水遊びする姿が目立った。
野川公園を出て、崖線を登る。昼食をとった後、神代植物公園を見学した。あまりの暑さのせいか、バラ園の花もあまり元気がない気がする。人もまばらだ。こんなに暑いと当然か!
むしろ、温室の方がほっとできた。
国分寺崖線の旅で、メインスポットのひとつは深大寺だ。
豊かな湧き水がでることもあって、都内有数のそばどころになっている。深大寺の参道には多くのそば屋が軒を連ねていたが、参道に連なるお店は午後2時にはのれんを下ろす。そのため、参道から少し離れたそば屋で小腹を満たし、先に進んだ。
猛暑の中での、ワンデートリップの最後は調布市仙川にある武者小路実篤記念館。そのHPには記念館について、次のようにある。
武者小路実篤記念館は、実篤が昭和30(1955)年から51(1976)年まで、晩年の20年間を過ごした邸宅(現:実篤公園)の隣接地に昭和60(1985)年10月に開館しました。
記念館は、実篤の本、絵や書、原稿や手紙、実篤が集めていた美術品などを所蔵し、文学や美術などいろいろなテーマによって展覧会をほぼ5週間ごとに開催して、いつでも新しい発見がある展示作りをめざしています。
閲覧室では、実篤の本を読んだり、実篤が好きだった画家の画集を見たり、友人の志賀直哉や岸田劉生らの本、雑誌『白樺』や日本近代文学の本や資料があり、調べものをすることもできます。
見るだけでなく、子どもから大人まで参加できる様々な講座もあり、充実した楽しい時間が過ごせます。
この資料館に併設されているのが、実篤公園。崖線の高低差をたくみに利用した庭園が公開されている。蚊に刺されながら、庭園を散策した。こんな家を持てるなんて、うらやましい限りである。
Comments